ミャンマーウオッチ2020年10月号 No.18

【政治】 先月以上にコロナの感染が拡大しているが、総選挙は11月8日に予定通り開催される見通し。

選挙を前に選挙に関連する(主にNLD立候補者を標的とした)暴力行為が散見されるとして、大統領は、法律に則って、各政府機関はこれを厳しく取り締まることを命ずる命令を発した。

選挙実施3週間前なって、選挙管理委員会は、選挙の実施を見送る地域を発表した。アラカン軍との戦闘が継続しているラカイン州では、半数以上のタウンシップで選挙が開催されない。

立候補者擁立数で2番目に多い統一民主党(UDP)党首が逮捕され、政党は解党を命ぜられた。

【経済】9月に年度末を迎えた2019年度の対外貿易額の速報値が公表された。輸出額は前年比5.82億ドル増の約170.6億ドル、輸入額は前年比9.35億ドル増の約180.86 億ドルであった工業関連の貿易額は減少したが、輸出では一次産品が、輸入では海外投資関連の輸入が増えている。また海外投資額は、前年比33%増の55億2597ドルであったが、目標額には届かなかった。

コロナの蔓延に伴い国内でも地域を越えた移動には陰性証明書が必要であり、検問所が開設されていることから、国境貿易だけでなく、国内物流にも影響が出てきている。

【社会生活】コロナの感染は10月に入っても勢いが衰えないことから、コロナ規制は10月末まで延長された。ヤンゴン等ではより厳しい規制が敷かれており、人々は困窮してきている。

【国際関係】インド外務次官および陸軍参謀総長は、ミャンマーを訪問し、インド東北部とラカイン州をつなぐカラタン計画の推進で合意した。またインドはネピドーに連絡事務所を開設した。

【中国】

【軍部】国軍報道官は、国軍には協力政党は無く、兵士も総選挙では自由に投票可能だと説明した。

国軍はインドから購入したロシア製中古の潜水艦の運用を開始した。

【少数民族】 アラカン軍と国軍の対立は継続しており、シャン州北部ではRCSSが国軍と衝突している。

少数民族政党は、治安を理由に選挙を実施しない地域が前回の総選挙より拡大され、当該地域は野党議員選出地域であるため、選挙管理員会の中立性に疑問を呈している。

【労働者】ヤンゴン地域区に出されている自宅待機要請により影響を受ける労働者で、社会保障費を収めている労働者に対して、給与の40%分が保証されることになったが、社会保障費を収めていない工場等の労働者に対しては保障が行われず、生活が困窮している。

【学生】 ラカイン州における武力紛争の終結を求めるデモを開催したことで、全ビルマ学生連盟の学生13名に対して逮捕状が出され、9名が逮捕され、不敬罪等複数の罪で起訴されている。

【市民社会】第4の権力とされているにもかかわらず、ヤンゴン地域区で出されている自宅待機の例外措置として報道機関による取材活動が認められなかったことに報道機関は反発している。

ミャンマー新型コロナウイルス感染症情報

感染状況 累計感染者数 34875名 類型死者数 838名 

9月下旬に新たな感染の中心となったヤンゴン地域区に自宅待機要請が出され、感染者数増大抑制は今後2週間が重要であるとされていたが、10月に入っても感染者数は増加し続けた。一時は一日の感染者数が二千人を超える日も出た。その後感染者数は千人前後まで減少した。この間、国家最高顧問アウンサンスーチー氏は、定期的に国民向けのメッセージを発して、感染拡大防止への国民の協力を訴えてきている。現在は、その効果が出て、一時期の感染拡大の勢いをある程度制御できているとの見方を取っている。

 累計感染者数を見ると感染者の数は、東南アジア諸国の中でも、シンガポールに次いで4番目に多く、死者数では3番目に多い。東南アジアにおける感染拡大地域とみなされている。

行動制限措置等

 30人以上の集会等を禁じる一連のコロナ対策措置は、10月末まで延長されている。

ヤンゴン地域区全域、ラカイン州全域、およびその他4つの地域区と州の11のタウンシップに自宅待機命令が出されている。対象地域では当初は厳格な運用がなされ、民間事業者では食品製造業、医薬品製造業、物流業および金融業など、生活に最低限必要な事業者のみが営業を出勤による営業を許され、報道機関を含めてそれ以外の事業者は自宅作業を要請されていた。また、CMP事業者(主に縫製業)については、9月下旬に10月上旬までの出勤停止命令が出された。この命令は2週間延長されたが、その後直ぐに感染対策を講じた事業者は、営業が許可されるようになった。同様にその他の事業者も感染対策を講じれば営業再開が可能である。

 ミャンマー国内の移動については、ヤンゴン地域区から他の地域への移動が原則禁じられている。それ以外の地域でも、地域独自の制限があるうえ、さらに独自の解釈に基づいて運用されており、混乱が生じている。原則有効期限72時間の陰性証明書を提示すれば地域を越えて移動は可能である。

出入国規制等

 査証の効力停止措置は、10月末まで延長されている他、民間航空機の定期便の運航は、10月末まで停止されており、海外との交流は制限されている。隔離センターは増設されているが、増加分をさばききれないため、入国後の隔離期間は、入国後6日目の検査で陽性であれば、施設隔離を解かれるような運用がなされている。

その一方で海外出稼ぎ労働者の送り出しについては、3月時点でミャンマー国内での手続きを終了していた者の渡航が再開されている。日本への新規技能実習生の渡航も再開された模様。

経済対策・国民支援策等

 9月までとされていた、観光業などコロナによる影響を受けた事業者に対する法人税、商業税の納付期限の猶予が12月末まで延長された。その他の措置も、同様に12月まで延長されている。また、7月初旬に締め切られたコロナの影響を受けている特定事業者向け利率1%、返済期限1年の民間事業者向け緊急融資の第1回目給付が実施された。

 低所得者向けに1世帯当たり2万チャットの現金給付が9月末に実施されたほか、公務員に対する無利子の貸付制度も実施されている。

 休業を余儀なくされた社会保障費を支払っている事業者の従業員に対して、給与40%分の補償が実施されたが、社会保障費を払っていない一般労働者や市民は困窮している。

ミャンマー総選挙ウオッチ

概況

 ミャンマー全土でコロナ感染拡大が続いており、ヤンゴン地域等一部地域には自宅待機が要請されている他、その他の地域においても選挙で動員できる人数も保健スポーツ省の命令により50人と制限される等、多くの地域で十分な選挙活動ができないため、一部には総選挙実施の延期を求める声があるが、総選挙は予定通り11月8日に実施される見込み。

 選挙管理委員会は、7月下旬に公示した選挙人名簿の間違いを修正した選挙人名簿を公示した。コロナの感染拡大を受けて、ネットで名簿を確認するように促している。人々の関心がコロナに集まっているためか、それともきちんと修正されたためか、批判の声は上がっていない。

 総選挙実施3週間前になって初めて、自由で公正な選挙の実施が確保できないとして、アラカン州およびシャン州の15タウンシップ全域に加えて、カチン州、カレン州、モン州およびバゴー地域区の一部の村落群での選挙を実施しない旨を発表した。全域で選挙が実施されない地域は、シャン州については主にワ州連合軍支配地域であり、ラカイン州(全17タウンシップの内9つのタウンシップ)ではアラカン軍の活動エリアである。ただし、一部抗争が見られないタウンシップでの開催を見送っていることに加え、前回与党NLDが議席を得ていない地域であるため、選挙管理員会は政権よりの判断をしていると少数民族政党は批判している。

選挙運動および情勢

 国家最高顧問アウンサンスーチー氏および、大統領ウィンミン氏等、ネピドー在住の候補者は、移動制限のために選挙区での選挙運動を控え、代わりにFacebook上でのオンライン選挙運動を実施している。情勢は赤(NLD)の軍事政権に反対するアウンサンスーチー氏に対する盲目的な信任か、緑(USDP)のナショナリズムを利用した外国支配に対する反感か、さらに少数民族居住地域では、民族主義かの選択になっており、国営メディアや知名度で勝るアウンサンスーチー氏側が優勢のようである。

 全国各地で、NLDやUSDPなどの大政党の支持者たちは、100人を優に超える集団で街中に繰り出して示威行為を行っている。明らかに保健スポーツ省の50人以上の集会禁止命令に違反する行為であるが、この示威行為への参加者は、党員ではなく政党支持者でしかないため、政党は自制を求めるだけで、取り締まることはできないという論理をNDL自体が展開している上、政府も取り締まりを行っている様子は無いため、野放し状態である。さらに、政党横断幕の切断のような小さな事件から、NLDとUSDP支持者間の暴行事件や(アラカン軍の関与が疑われている)NLD立候補者の拉致事件まで、選挙関連の暴力行為も散見されている。

このような状況を憂慮してか、大統領は選挙3週間前の10月16日に、各政府機関は法律に則って、このような違反行為を厳しく取り締まることを命ずる命令を発した。

期日前投票

日本をはじめ在外大使館では、事前投票が開始された。

その他 与党NLDについて全国で2番目に多い立候補者を擁立している統一民主党(UDP)の党首が、選挙運動期間中に逃亡罪および資金洗浄罪で逮捕拘束された上、政党は解党を命ぜられた。逃亡自体は前政権での海外逃亡政治活動家への帰国の呼びかけ等で実質解決済みであるはずのため、その政治的意図をめぐって注目が集まり、大統領府報道官が特別記者会見を開く事態にまで発展した。

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