上手な通訳の使い方1

こんにちは、ミャンマー語翻訳・通訳専門会社、合同会社あうん代表の細川です。

通訳雑感ブログの開設に当たり、数回にわたって「上手な通訳の使い方」について通訳者の視点から解説します。第1回目は、「通訳者が頭の中で行っていること」についてです。

なぜこのテーマを最初に選んだのかというと、通訳者が頭の中で行っていることを良く理解して頂くことで、上手に通訳を使えることができるようになると考えるからです。

プロの料理人や伝統工芸の職人さんたちも、自分が使う道具にこだわりを持ち、その道具がどのようなものであるのかよく理解していますよね。異文化コミュニケーションにおいて、通訳者はプロの料理人が使う包丁や、伝統工芸の職人さんたちが使う彫刻刀と同じように、大切な道具です。

その道具の働きを良く理解して、うまく使いこなすことができれば、より正確に、そして効果的に外国人に自分が伝えたいことを伝えるようになるはずです。

では、通訳者が通訳をしている時の頭の働きはどのようなものでしょうか。

私たち通訳者が、第一に心がけていることは、話し手が話した内容の正確な理解です。

話された内容の正確な理解を妨げる要因の一つに同音異義語があります。日本語は同音異義語が多いため、音声情報だけでは、発話者の意図が良く分からないのです。

例えば、土木工事の問題を議論している中で、次のような発言がありました。

「ししょうが、ししょうをきたしている」。

どういう意味でしょう。もちろんダジャレではありませんし、単なる言い間違えでもありません。

土木技術者であれば、最初の「ししょう」は「支承」(普通は、これが何を指すのかもよく分かりませんよね)を指し、次の「ししょう」は「支障」を意味していることは自明のことです。

通訳者は、土木技術者と同じ視点に立ち、この発言が伝えたい内容を一瞬にして理解しなければならないのです。

このように話された内容が良く理解できないと、正確に通訳することができません。これが通訳の出発点です。

もし仮に、発言者の発言の内容を正確に理解することができたとしましょう。その次に通訳者がぶち当たる壁が、人間の記憶力です。

ある元大物政治家の通訳をした時ですが、通訳がいることを全く気にせず、何分にもわたる大演説を打ったことがあります。もちろん、プロの通訳者としては、話された内容を正確に理解して、そして記憶し、通訳する必要があります。

でも話された内容を正確に記憶することは、意外と難しいのです。

今度は伝言ゲームを例にとってみましょう。聞いたことを、すぐさま隣の人に伝えるというかなり単純な行為ですが、間違ってその内容を伝えてしまう人がいます。

通訳は、その聞いて、記憶し、伝えるという行為を、何百回、何千回と繰り返すわけですが、間違いが許されません。

この間違わないということは、簡単そうに聞こえますが、かなり難しいものです。そのため、発言の内容を正確に記憶することができるように、通訳養成学校では、ノートの取り方をみっちりと鍛えられます。人間の頭では覚えきれないことを、ノートを使って、記憶を紡ぎだすことができるようにするためです。

発話者の発言の内容を正確に理解し、きちんと記憶することができて初めて、外国語に直すという作業が始まります。

通訳者にとって、外国語で表現するという行為自体は、それほど難しいものではありません。もともと人より外国語を上手に操ることができる人が、通訳を目指すわけですから、頭の中にある内容を外国語で表現するのを苦手とする通訳者がいるはずがありません。

とは言え、頭の中にある内容を外国語として自然な表現を用いて伝えるという作業も大変な作業です。

なぜなら時として、発話者の意図を正確に伝えるためには、「はい」ではなく、「いいえ」と表現しなければならない場面もあるからです。

このような離れ業ができるようになるためには、発話者だけでなく、聞き手の理解の状況も踏まえながら通訳していかなければなりません。そうすることで初めて、発話者の意図を再表現することが可能になります。

以上のことから、通訳者はただ言葉を置き換えているのではなくて、「理解」➡「記憶」➡「再表現」というプロセスを経て通訳という作業を行っているということが分かって頂けたかと思います。

通訳者を使いこなすためには、通訳者がこのプロセスをきちんと踏めることができるように補助して頂く必要があります。

通訳という道具をきちんと理解し、その特性を知って、道具を使いこなすことができれば、伝えたいことを100パーセント伝えることができるようになるはずです。

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