ミャンマー語通訳・翻訳合同会社あうんは、2020年末に実施が予想されるミャンマー総選挙について、選挙概況や注目ポイントだけでなく、選挙情勢、世論の動き等に分けて、説明しています。また、ミャンマーの選挙に関する基本情報や、注目政党の動き等についても、説明しています。

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目次

  • 選挙概況
  • これまでの経過
  • 注目ポイント
  • 世論・選挙情勢
  • 基本情報
  • 注目政党の動き

2020年総選挙概況

実施時期 2020年11月8日(日)

2020年7月1日、選挙管理委員会は、次の総選挙を2020年11月8日に実施すると発表した。

当初、選挙管理員会は、前回、前々回の選挙においても、開催時期の発表は実施の約3か月前であったとし、新型コロナの影響も鑑みて後日発表すると説明していたが、総選挙開始より4か月前の発表となった

選挙準備

立候補者受付 7月20日から8月7日まで

選挙管理委員会は、2020年7月20日より8月7日までの期間で、2020年総選挙立候補者の届け出を受け付けると発表した。2020年8月17日までに立候補者の審査を行う。

選挙区区割り公示

選挙管理委員会は、6月28日に、2020年総選挙の区割りを公表した。これまで治安上の理由で選挙が行われてこなかったワ州連合軍支配地域や、武力紛争が続いているラカイン州北部も選挙を実施する選挙区として定められている。ラカイン州における選挙は、治安を理由に実施を見送るとする発表が後日あるという見方が優勢である。

選挙人名簿

選挙管理委員会は、2020年総選挙に向けて2019年7月13日から11月6日まで、選挙人名簿の編纂を実施した。この結果、今回の選挙では選挙人の数は3700万人に上る。選挙人名簿には軍人等はまだ含まれておらず、選挙管理委員会は総選挙に向けて毎月名簿を更新している。なお前回までの総選挙では、選挙人名簿の編纂は、選挙の数か月前に実施されていた。

選挙管理委員会は、7月25日から8月14日まで選挙人名簿を最寄りの選挙管理委員会事務所で公示すると発表した。国民は公示された名簿を確認して、不備を指摘し、修正を求めることができる。この修正を受けて、正式な選挙人名簿が10月中に発表される。

7月に発表された選挙人名簿には、連邦大臣の家族の名簿も間違っているなど、多くの不備があることが指摘されている。また、公示された名簿は、本人とその家族等については写真撮影が許可されているが、全体の写真撮影が許可されていないことについて、野党は批判している。

政見放送実施予定

選挙管理委員会は、9月8日から11月6日の間に国営放送を通じて政見放送を実施することを発表した。政見放送を希望する政党は、放送用原稿と共に8月22日までに、選挙管理委員会に申し出る必要がある。

これまでの経過

2020年8月6日 選挙人名簿閲覧期間を1週間延長

選挙管理委員会は、選挙人名簿の閲覧期間を当初7月25日から8月7日としていたが、この期間を1週間延長して14日までとすると発表した。発表では延長の理由は述べられていないが、閲覧する人数が未だ限定的であることに加え、名簿に多くの不備が見つかっていることが理由だと考えられる。

2020年7月23日 政見放送実施予定発表、NLD立候補者リスト発表

NLDは立候補者リストを発表した。これによるとラカイン州の一部を除くほぼすべての選挙区で立候補者を擁立している。

2020年7月20日 立候補受付開始

2020年7月8日、選挙管理委員会は、総選挙の監視を希望する国内外の監視団は、8月15日までに監視を希望する旨を選挙管理委員会に申請しなければならないと発表した。また、監視を行う際の行動規範についても発表した。

2020年7月6日、ミャンマー人権委員会は声明を発表し、11月8日に実施される総選挙が自由で公平な選挙となるように監視を行うと発表した。

2020年7月1日、選挙管理委員会は11月8日に実施すると発表した他、立候補者の届け出を7月20日から8月7日までの間受付、8月17日までの立候補者の審査を行うと同時に発表した。さらに7月1日より閣僚を含む政府高官も政党活動に従事することができると発表した。選挙活動への参加については、8月18日以降に発表するという。

2020年6月28日、選挙管理委員会は人民代表院民族代表院地方議会の選挙区の区割りを発表した。これまで選挙が行われていなかったワ連邦軍支配地域等においても選挙区が設定され、ワ支配地域でも初めての総選挙が行われる可能性が出てきた。また、紛争が続いているラカイン州北部の区割りも発表された。

2020年6月26日に選挙管理委員会は、各政党が選挙期間中に守るべき行動指針への署名を求めた。しかし、最大野党USDPを含む33政党が、建国の父アウンさうん将軍を含む歴史上の人物の肖像を用いて選挙活動を行わないとする点が含まれていないことを理由に、署名を拒否した。

2020年2月選挙法細則が改正され、これまで180日以上選挙区外に居住する者は滞在先の住所での投票か、元々の選挙区での投票かを選択できるようになっていたが、この日数が90日以上へと半減された。これによりミャンマー人出稼ぎ労働者の多い少数民族居住地域において少数民族の声が選挙結果に反映されにくくなったのではないかという批判されている。

また、2020年2月の選挙法細則の改正においては、ミャンマー国軍兵士およびその家族が投票を行う投票所は、立候補者等が自由に立ち寄ることができる軍事基地以外の適切な場所に設置されることになった。

2020年6月2日に開催された選挙管理委員会の会議によれば、労働入国管理人口省と協力して、選挙権者の数を基に、これから今回の選挙に向けた選挙区の区割りを決定していくことになる。

注目ポイント

連立政権の可能性 NLDは圧勝するのか?

ミャンマー国民、特に少数民族への帰属意識を持たないミャンマー人の間で、アウンサンスーチー氏に対する盲目的な信奉者はかなり多いうえ、NLD政権が思うように結果を残せなかったのも、軍が権力を手放さないからだという説明に納得する人も多い。そのため2020年の総選挙においても、NLDが最大勢力となることは現時点では間違いないだろう。問題は、NLDが単独与党となりえるかだろう。

NLDが圧勝するかどうかは、おもに少数民族が居住する州における選挙情勢および、NLDの経済政策等に不満を抱く人々の投票行動による。

若者の票の行方? 初めて投票権を行使する若者は約500万人

全体の有権者の約13強%にあたる500万人が、2020年の総選挙で初めて選挙権を行使することになる。2010年の総選挙ではまだ8歳だった若者が選挙権を持つことになる。若者の間でもアウンサンスーチー氏に対する支持を表明することの「正しさ」が共有されている。そのためアウンサンスーチー信奉者は、NLDに投票すると考えられる。しかし、NLDの指導者を見ると1988年の民主化運動の辛辣をなめた老人クラブという印象もぬぐい切れない。また軍事政権に対する嫌悪感も、その状況を実際に経験したわけでないにしろ、若者の間でも共有されている。このため、USDPもこれらの若者層の票の取り込みに苦労するであろう。物心ついたころには軍事政権ではなかった若者が投票権を持つことになるため、若者の票がどこに流れるかが、選挙の行方を握っているともいえる。

紛争下にあるタウンシップにおける選挙の実施

現在少数民族との武力衝突が続く、ラカイン州およびシャン州北部等での選挙の実施の有無に注目したい。特にラカイン州では北部のタウンシップが武力衝突の影響かにあり、総選挙の実施が危ぶまれている。しかし、前回の選挙においてもラカイン民族政党が勝利したことから、もし選挙が実施されないとするとラカイン民族の声が国政に反映されなくなり、このような決定は恣意的であると批判が出かねない。

2010年の総選挙では、5つの選挙区で治安を理由に選挙が実施されなかった。2015年の総選挙では、7つの選挙区で治安を理由に選挙が実施されなかった。

世論・選挙情勢

選挙人名簿の不備に対して批判集中

基本情報

選挙権

有権者数3千7百万人

被選挙権

上院の被選挙権年齢は30歳、下院の被選挙権年齢は25歳

ミャンマー国籍を有する両親から生まれた者

過去10年間にミャンマー国内に居住している者

民族代表院(上院)議席数224名

14の地域・州から12名ずつ選出される議員168名と、各地域・州ごとに4名ずつ国軍が推薦する議員56名から構成される。過半数を獲得するには、122以上の議席を獲得する必要がある。

被選挙権年齢は30歳

人民代表院(下院)議席数440名

原則的にミャンマー国内にあるタウンシップ毎に選出される議員330名と、国軍が推薦する議員110名から構成される。河畔酢を獲得するには、220以上の議席を獲得する必要がある。

選挙区は現状ではタウンシップ毎となっており、タウンシップに居住する選挙権者の数は、選挙区の区割りを策定する際に考慮されない。例えば、2015年の選挙では、一番人口が多かった選挙区はヤンゴン地域のラインターヤー区であり約45万人であり、一番少なかった選挙区は、セイカン区の2000人であった。

有力各政党の動き・注目政党

国民民主連盟(NLD

全国的に候補者を擁立して、次回の選挙でも2015年の総選挙と同様に過半数以上の議席の確保を狙っている。7月、政権幹部の政党活動が解禁されたことを受けて、選挙対策用に政党本部を暫定的にヤンゴンからネピドーに移した。

ラカイン州の一部を除くほぼすべての選挙区で立候補者を擁立している。現職議員の約80パーセントが再選を目指している。

連邦団結発展党(USDP

全国的に候補者を擁立して、政権奪取を狙っているが、政党のリーダーが誰であるか良く分からない状況にある。前回の選挙と同様に、退役した軍人も候補者として迎え入れるとしており、国軍との密接な関係は維持されている。次回選挙の候補者に求める資質に愛国心を入れるなど、外国からの干渉を嫌う保守派層の取り込みを狙っている。ラカイン州を除く全国で立候補者を擁立の予定。

人民さきがけ党(People’s Pioneer Party ပြည်သူရှေ့ဆောင်ပါတီ

ミャンマーの有名女優の姉で元NLD議員テッテッカイン氏が、NLDからたもとを分かち2019年に設立した政党。連邦団結発展党(USDP)とは異なり、軍事政権を想起する負のイメージもなく、党首が経営者一族ということもあり、NLDによる政権運営に不満を抱く人々による政権批判の受け皿になる可能性が高い。注目をあつめる代表的な3つの新興政党の内、SNS上では一番フォロアー数が多いことからもわかるように、若者からの支持も厚い。

国民党 (People’s Party ပြည်သူ့ပါတီ

88年学生運動のリーダーの一人であるココジー氏により設立された政党。少数民族政党とも選挙協力をして、少数民族が居住する州では候補者の擁立を一部控えるなど、連立政権樹立を目標に活動している。88年の民主化運動(政治運動)に少なからず関与してきた政治に関心がある中高年には、党首ココジーによる知的な政治議論は響くものがある。しかし、大衆に対するアピール力に欠ける。

連邦改善党(Union Betterment Party ပြည်ထောင်စုကောင်းကျိုးပါတီ

元国軍No.3で、第1次国会で下院議長を務めたシュエマンが率いる政党。全国規模で立候補者を擁立したが、党首のシュエマン氏は総選挙の監督指揮を理由に立候補しなかった。

少数民族ごとの注目政党

シャン族

シャン諸民族民主連盟(SNLD)

1990年の総選挙にも参加したシャン民族政党。2010年に開催された第1回目の総選挙では、党幹部が投獄されていたこともあり、選挙をボイコットしたが、2015年の総選挙に参加し、シャン民族政党では一番の勢力を誇る。その成立の系統からNLDと近い関係にあるとされる。俗称は「タイガーヘッド」。今回の選挙では、全国で約200人の立候補者を擁立する予定。

シャン民族民主党(SNDP)

2010年の総選挙で躍進したシャン民族政党。元々シャン民族民主連盟の書記が離党し設立した政党である。USDPと近い関係にあるとされる。俗称は「ホワイトタイガー」前回は200以上の立候補者を立てたが、今回の選挙では主にシャン州を中心として110名程度に限定するという。

ラカイン族

アラカン民族党(ANP)

作成中

カチン族

カチン州人民党(KSPP)

カチン州のすべての選挙区で候補者を擁立。ミッソンダム計画反対を選挙公約とする。

カレン族

作成中

モン族

モン族統一党(MUP:မွန်ညီညွတ်ရေးပါတီ)

モン民族政党が合併して設立されたモン民族政党。2020年6月に候補者選定に関する指針を作成し、その後候補者を選定するという。モン州の他、カレン州、およびタニンダーリ地域で候補者を立てる予定。

カヤー族

作成中

チン族

チン民族民主連盟(CNLD:ချင်အမျိုးသားဒီမိုကရေစီအဖွဲ့ချုပ်ပါတီ)

2018年10月に既存の3つのチン民族政党が合併して、設立されたチン民族政党。チン州の他、チン民族が居住するザガイン、マグウェ地域およびラカイン州の合計48選挙区で立候補者を擁立している。